ここピーターバラの見本市会場は、多少降られてもビリングほど足場が悪くならず快適といえば快適。晴れ得意の気候地域性もあり、ロンドンなど大都市からのアクセスは少々悪くなりますが、そうした理由からこちらのショウは好まれ易いのです。
だから多少の混雑等は予測が通っているのであまり驚かないのですが、今年はまるで様子が違いました。そんな無茶をしなくても普通にゲートが開く時間になれば入れる、というのに、折り返しながら遥々と続く行列になってしましました。
一寸割愛していますが、この右側のフェンスに沿って、施設境界の外周をぐるりと沿道まで続く行列が出来ていたのです。それほどの列を為したことはかつて経験がなく、たいへん大きな節目に向かう中で「残され島に暮らす」支度を始めるユーザーの思いを感じます。
ディフェンダーがファイナルを通告された今年は、世界的にフィーバーがことのほか激しく、吊られて旧シリーズにも注目が寄せられています。遂にこのジャンルが、丸ごと、ヴィンテージとなるのです。
恐らくそうした背景から、将来展望とキャリーオーバーの為の情報獲得・素材蒐集へ結集していると思われます。それをサポートするのは「専門」業者。我々もその中のひとつですが、それとてやはり愛好家でなくては立ち行きません。
愛好家が愛好家を牽引する。そして助け合う。そういうものなんでしょうが、今年は温度は高いはずです。温度といえば、気温そのものもまだ真夏の様相、緯度が高いので日本の東京界隈よりは過ごし易いですが、近年世界的に夏が暑いのか、まだまだ季節は進まないようです。
こうして展示に向き合いますと、大体いつものレイアウトです。顧客が戸惑わないように、展示ユニットを大きく入れ替えたりしないようにされているのでしょう。
人の出入りの多いところには、お土産屋さんとか料理やおやつの屋台が並びます。屋台の殆ど全てが特装車輌で、トレーラータイプやトラック・バンの改造です。こうしたイベントを回って商売しているのですが、それがまた我々には目新しいので、楽しめます。
ランドローバーに傾注した部品や用具、お土産といったお店は、大体テントブースを広げています。大体、いつも同じ面々です。日本人なんて珍しいから一発で覚えられてしまいます。
行列を楽しみつつ、開場を待つ弊社代表とLR一の宮店長さん。
重たい自動車部品や部材を、運んで来たトラックから下ろして並べる。それだけでも気が遠くなりそうですが、彼らは車中泊をしながらがんばります。めんどくさい、儲からない、歳とった〜なんていっていますと、ランドローバーを長く大切に使おうとする人たちが、その願いを達する可能性から一層遠退いてしまうのです。
勿論宿泊したり運んで来たりした車輌自体も展示物になるのです。好きでやってる商売でしかもクルマ屋ですので、デモンストレーションに使われているクルマの何とも凄いことといったらそりゃあ大変な程です。丸々真似をするのは今一つお勧め出来ない。その中で自ら必要とする部分を切り抜いて愛車に施したりする現物見本のような扱いですか。道具やら、ジャンク部品やらを売っているお店は沢山あります。何処の世話になったらイイやら分かりません。並んでいるものから根気良く必要なものを探しますが、本当に根気しか頼れるものはありません。乱雑に並ぶ品々の中から欲するもの、欲するサイズ、欲する程度で第六感を総動員して出逢うという感じなんです。
工具は昨今大変モノが宜しくなりました。昔ならこんな風体のセット工具なんてこういう状態で売っている限り凡そ使い物にならなかったもんです。ボックスはすぐ割れちまうし、ハンドルが曲がる、レンチが折れる、口が割ける。けがを誘発するというんで、やはり銘柄ものを求める傾向でしたが、今はどれ買っても、それこそプロが使い斃すのでなければ充分になりました。
日本では手に入らない材料もあります。布、網、一部の金属材料、部品として加工されたホースなど。私達は一応商用で来訪しているものですから、お客さまの要望を纏めたメモ等見たりし乍ら探索致します。
或いは、施工中のお客さまのお車に使わなければならないものとかも、何とか捜し出していかねばなりません。遊んでいるようですが結構忙しいです。
許された時間はたったの二日しかありませんから、カタログなどでは到底足りない素材をここで触れ乍ら見い出していきます。
新型PUMAディフェンダーも現れて8年、中古車も出揃い、修理は勿論、中古車だからこそのドレスアップの需要も見えて来ましたので、使えそうなものを探さねばなりませんが、そういう段階でのターミネートです。勿論そうなれば急激に外装部材や適応社外製装備品が減って行きます。ユーザーにとって、この長命な車種を使うことはそうしたモノが忘れられず現れることによる安心感も求められたのですが、ここで一気にそれを挫かれる。がっかりする前に、一応暫くは所有する愛車を使い続けるための計画や設計が必要だし、品物自体も必要。濃密な二日間を送るのです。
そういう店があるかと思うと、車体とは無縁な感じのアンティーク屋さんがいたりもします。コレクション趣味がある人はウッカリそれに入れ込んでしまい肝心の自動車の保守用の買物が後手に回るでしょうね。旧い看板とか、旧いおもちゃとか。
ジャンク部品屋で売っているものは、大抵がこのようなことになっている、もんなんです。そのまま使うにはチョットどころかナカナカ難しいかも知れない、それなり以上に手が掛かる、可能性が高い。だからといって悪い訳ではないんです。溶接が出来たりする人にはお得なお買い物になるの間違いないです。
ディフェンダーにはありがち、強風で捲り返されたドアなんか、アルミだからなかなか綺麗に板金加工出来ないので、成る可く取り替えたいとなると中古品を思い出します。
ただもう現時点で中と外の色が違うのがありますけれどね。それも考えようによっては生きる道なんです。→のような使い方をしてもいいから動いて助けになれば良い、と思えば、少々のコトはなんのそのでしょうねえ。
御予算に関しては結構安心。大体のお店はクレジットカードOKですし、今はスマートフォンでクレジットカードを受け付けて全くペーパーレスでやってくれる。現金目当てのテキヤ商法の人は一軒もありません。現金がない人にもちゃんと貢献する用意があります。私も昔ここでこういうお店の世話になってます。
品揃えは、出展の店々でこれもタスケアッテいますので、エンジンの奥深くのモノから、再生された安心のユニットに至る迄、ないものはなく、その気になればここで買い集めたもので一台のランドローバーが作れるくらいです。比較的新しい年式のクルマの部品も大分出揃って来ていました。それらを暢達して、場内で付け替え、旧い方を売って行く人も居ます。
本当にここで集めたもので作る人もいますので、ばかに大きなユニットも何もこれから要るものを探しなさいというばかりでなく、細かく買い集めると高く付いて大変だろうとわざわざばらさず持って来て並べていたりもします。
出たばかりと思われる新型の部品もあります。新型車といえども、交通事故で失われたり、それでも部品の一部が不要になって取り除かれるということはありますね。解体の際に再利用に向けられたり、中古部品として買取られたりしている訳です。
シート、シートのレール、シートのベース、配管や配線の一本づつ、ワイヤハーネスとか、必要としている人だってそうそう覚えていられないだろうモノまたモノの山。雑然としていますがこの中の何かで一台が一時代助かって行く。
またはそうして助けられていきたい。
そうした人が頼る一角です。そんなざわめきは特に初日の午前に集中します。
この一角にそういう人々の群れが押し寄せているのです。
人の波を縫い乍ら、目当てのものがにおう品物の山を見つけたら組付いてガサゴソやる。そのうち手は真っ黒。
そうして安心と経済運用をものにする。
ショップに乗り付けて注文出来るお金持ちな人とは随分風情が違う人も大勢居ます。ここはランドローバーの母国、ここではそれは国産車、しかも普及車です。車がくたびれれば人もくたびれる。一緒になって歳を取る。
弱ったところは新品で直せれば幸せですが、死体移植・ドミノ移植も生きる道。
この人波が乗車を並べたらそれこそ大変なことが起きそうだ。
オフロードレース用に改造されたディフェンダーのボンネットフードがチェックプレートなんて、少し笑えますね。
ミニカーを集めている人も多いでしょう。何も大人専用ではなく、連れられて来る子供達のお強請り対象にもなりそうなおみやげを、それとなく並べている人も沢山居ます。
英国民にとって、モータークロスカントリーはヨットと同じように国民的な乗物スポーツです。単なる目立ちたかりではなく、より速くより確かに、通い付けているコースの難所をパスする方法を議論したり推奨したりして段々このような姿に成長していく訳です。今では程々以上に成長しているオフ四駆走りスポーツの環境で、この状態ならではの転売価値も表れています。勿論ディフェンダーなど英車である必要はありません。トヨタやベンツも相応に存在しています。
ディフェンダーは、ヒンジが露出していてアクセントになっています。これをどうにかする、というのは毎度お目見えするところなのです。今回目を引いたのは、ロストワックス製法で作られたステンレス製のヒンジ。これは濃色系の車体にマッチするでしょう。ピカッと光るワンポイントにイイと思いました。
ここに集う出店も、我々も、ディフェンダーのターミネートについて真摯に取り組まねばならない立場は同じだろうと思います。当面は一旦市場に収容されている新車が浸出しますので、選べる程ではありませんが購買は望めますし、その需要に沿った要望によるアフターマーケットは残存するでしょう。余り長くないその期間を過ぎますと、急速に保守需要に傾いていきますので、整備工場との二人三脚、顕著になる保存性車輌と消耗性車輌のギャップを認めて活動することになると思います。
アフターパーツ・特装部材をイメージの中で必要とされているオーナーさまには、早急にビジョンを固めて頂き、ご発注を御検討頂けますよう、強くお薦め致します。トップへ・次へ