LAND ROVER DEFENDERについて

しらない人に余りにも不親切なので、われらがHERO、 DEFENDER についてのまめ知識をひとつ。

DEFENDER、防衛者たる命名をされたランドローバー社製のフルタイム四輪駆動ユーティリティ。1985年に、戦後1948年に開発されたSeries I から発展した、原型であるSeries III から大幅モデルチェンジし、モデル名を変更した。無骨なデザインは複雑な工作箇所をなくしてメンテナンスフリーを目指すこと、特装の可能性を残す事等いろいろな目論見の元で長く採用され続けた伝統の四駆の顏たる姿。その素材はアルミニウム合金であり非常に軽量に仕上がっているため、重心は大きくシャシに接近し非常に安定性に優れている。またシャシの剛性は極めて高く、ボディにストレスを全く与えない。そのため恐ろしく長寿命である。ホイルベースの違いで90, 110, 130の3機種が通常ラインナップとされている。各々の数字はホイルベース寸法のinch表示であり単刀直入、車の長さが分かる。各々にピックアップトラック、ステーションワゴン、ハードトップ、ソフトトップのバリエーションが有る。バリエーションの内容は単に車格についてのみでありグレードに関しては90、110ステーションワゴンにカントリーパッケージというやや仕上げの良い座席とトリムを施したチョイスを用意しているだけである。孰れにせよインテリアは全く贅沢とは無縁で、正直いって最低限である。これも内装部品が齎す整備性の悪さを世界各地の極限状況で何十年も働くであろう DEFENDER 本体を守るべく考え抜かれたダイエットである。もし、シートを全て失ってしまっても操縦装置と機関駆動機構が生きていれば運転可能なコンセプトを貫く現代では希有な構造を守っている。

搭載されるエンジンは、現在2.5リッタL4 コモンレールターボヂーゼル・PUMAが主力である。4リッタV8ガソリンインジェクションエンジンは、日本向け特別仕様車に採用されていた(98、 99各年式)。本国仕様には3.5リッタV8ガソリンキャブレターエンジン仕様もあったが98年で生産終了となっている。
2000年に紆余曲折の末BMW系列から切り離され、Ford傘下となり、その後タタグループに。経済力を得て再び活性化している。

足周りは現在コイルスプリングをリジットアクスルに載せたフルフロートトレーリングアクスルだ。フロントはリーディングコイルアクスル。何故独立懸架にしないのかというのは愚問である。駆動部品の中でも高い負荷を担うドライブシャフトを露出する事は、 DEFENDER が使われる環境に於ては危険極まりなく、また虐め倒されるホイルベアリングの潤滑維持の為にもアクスルの内部に全てを纏めたいのは大型トラックと変わらない願望的コンセプトでもある。リンケージが増える独立懸架が必然的に車体重量を増すことも嫌う要因の一つである。実際の悪路に於いては各車輪の独立性よりむしろある程度の一体感があってお互いの車輪が車軸という安定した個体に繋がれたまま地面を追い掛ける方が遥かに耐久性が高まる。前身 Series III 迄はリーフリジットであったが、これでは車軸のトラベルレンジが小さく、リミットが早く積載重量によってはボディスタックを早めてしまう為、より広く車輪を運動させられるコイルスプリングを採用するに至っている。無論ドライブシャフトは切損する可能性が高い部品であるが、仮令そういう事故が起こったとしても、敢てセンターデフを持たせないリジットドライブにより、前後何れかの生き残ったアクスルによって多少走破性は失えども行動を続ける事が出来るものである。また、前身の Series 車は前輪のスイベルをユニバーサルジョイントに頼っており、後輪駆動状態に於ける舗装路の高速走行時の許容範囲をこえる操舵負荷の軽減の為フリーホイールハブを取り付ける例を多々見たが、 DEFENDER では改良された等速ジョイントによって、それは大きく軽減され、逆に迅速な四輪駆動切り替えを阻害するフリーホイールハブを取り付ける事をナンセンスとしているうえ、その性能を存分に活かしフルタイム4WDとし、センターデファレンシャルのロックも加わりその走破性は驚異的である。

このゴツイ車体は、見かけによらず軽快な足を持っている。多少現代的には非力かと思われる小振りなエンジン乍ら、130 km/h 巡航が可能で、街乗りでも重たさを全く感じさせる事は無い。燃費もヂーゼル車なら10km/L程度とかなり好成績である。ボクシーな車内は隅々迄、寸法分をしっかり利用出来結構沢山詰め込める為生活の足やレジャーの足は勿論仕事車としては最高の機能を発揮する。オフロード性能や耐久性を含めたトータルバランスに関して、筆者の友人でNGO活動で常にアフリカ諸国に赴いている者曰く「猛烈な底力」ということで、「XXくるとかとは比較に等ならない」という、絶賛ぶりから感じ取って頂きたい。
実際、極端に造られたオフロードコースを走らなくとも、街乗りでその高性能ブリは充分体感出来る。兎に角何を踏んづけてもヌタヌタと乗り越えてしまうこと、普段ハンドルを大きく取られる縁石の乗り越え等全然苦にならなくなる。運転に若干でも不安のある人にとっても、面で構成された車体の車輌感覚の確かさ、コマンドポジションと言われる見通しのよい眼高の齎す広い視界は脚力とも相まり心強さとなろう。

その他世界のとんでもない所で DEFENDER は販売され、各々のシゴトに従事している。ところが余り民間向けに販売されている様子は見られず、これを選ぶのは職務が重大な公的機関や軍隊ばかりであり、特に UNTAC は有名な筆頭ユーザーである。何でもアリという感じがするアメリカ本土でさえ日本と同じように正規販売はされておらず少々の特別仕様がリリースされているに留まる。それでも民間に、ちゃんと熱烈なユーザーは「いる」。私達と同じように。これはひとえに、現在の車社会は既に DEFENDER の性能を必要としていない状況に至っているが、こと自動車なくしては生命維持さえ困難になる補給も怪しい場所で使うにはやはり DEFENDER でなければならないと望まれ続けている証しでもあろう。世の中には今いろいろな自動車が販売されている。その中で特に人が知恵と身体だけに命を任せて働く現場において、 DEFENDER をおいて他にその要望に応えうる信頼性を持つ自動車が無くなりつつある事を示している。特別この乗用車のサイズに於ては顕著になって来ている。知らないうちにそういう環境に於て唯一無二の存在になってしまっているのである。その為 DEFENDER は、かのスーパーカー達が匂わせた極限を超えたスポーツ性に、四輪駆動のスパルタンさを加えてさらにエキゾチックにアピールする性格を強く感じさせ、世界のエンスージャスツに熱愛されているのである。

そしてもうひとこと。前身のSeries車はターザン始めサファリもののテレビ映画等で充分お馴染みであろう所だが、その役どころは常に「善玉」であった。ローバーが現れることは、善人が現れたという前フリになっていた。悪人は普通xxxくるーざぁに乗って現れた。イギリス映画だったから、という単純な理由では無いらしく、ランドローバーは「徒党と蹂躙を経験していない」純真さが印象として存在する、ということでどうしてもそういう流れになったらしい。ジープでは、威力があからさまに感じられたようで理由が無い限り登場しなかった。この思いは現在でも受け継がれ、ランドローバー社はオンもオフも理解し、単独で有効に使用者を助ける車作りを DEFENDER に施している。これには各国がバラバラに定める衝突安全基準等の規制に準拠する事が逆に邪魔になるのである。スーパーカーが現在でも突出した性能を好むユーザーに求められるものであるように、 DEFENDER はオフロード車のスーパーカーたる視点の基で生産されており、ユーザーの多くはそういう性能が欲しい用途があるかそれを肌に近く感じたい人々である。ハコものとしての自動車の使い勝手ばかりでなく、伸びて地面を常に捕らえる足、最大傾斜角と登攀能力、アプローチ・デパーチャアングル、視認性と車輌感覚。イージーなドライビングを可能にする性能を最高の部分で結晶させている。これほど迄にトータルバランスを追求された自動車も数少なく、このドライバビリティは前身である Series III とは程遠いものでもあり、大幅に進歩した現在最高の四輪駆動ユーティリティー車輌であると考えて良かろう。

実際、 Series III からのモデルチェンジは、「Farmer's Friend」からの脱却でもあった。 Series III 時代迄は、成る可く安く販売出来る高性能で故障に強い四輪駆動車というのが製品の狙いであった(1970年当時米東海岸港渡し価格$3,300)が、今少し、エンジンや足回り等の時代遅れが問題でそれを踏襲していては世界の必需に応じられなくなることが見え始めていた。それは、農村といえども四輪駆動車の性能は既に要らない程道路環境は整備され、さらにその時代日本始め世界の乗用車メーカーの多くが発表したRV系統の車体が存分にオンロード傾向に発展し始めたという憂慮すべき事態を鑑み、突出したオフロード性能を許す限りの低価格で可能な限りのトラブルフリー、イージーメンテナンスを求めて生産する事を次代のコンセプトに置いて開発されたのが DEFENDER だったのである。単に売れる事だけを考えた車造りが齎した車ではないのである。其れ故このブランドは、他にちゃんと黙っていても売れる車も輩出している。それも DEFENDER という叩き台が存在したから可能になった事であろう。

守り、それは心細い立場であるが、その想いはとてつも無く大きい。故に防衛者なのであろう。

貴方も DEFENDER でアクティブな人生を開拓してみよう。