フナゾコ

Defenderのソコには、特徴が沢山ある。

先ずフレームに注目。贅沢千万、ボックスフレームである事が分かる。しかも物凄い高さの。三次元強度を最大限に得る為に敢て手間の掛かる工程管理の難しいボックスフレームを採用している。これは、サスペンションの性能の最高の部分を引き出し上部構造を守る為に必要な事なのだ。溶接を見ても、何処のセクションにも全く手抜かりは見られない。実際全重量のかなりの部分をこのフレームが占める。重心を大きく下げ、スタビリティを向上させる役割も、同時に担っていることを窺わせる。

そして、アクスルにも驚きたい。3トントラック並のものが奢られているではないか。ついでにまた、このアシが良く動くことったらない。よくぞまあこれでアシと胴体がバラバラにならぬものだと思わせる程。ところがだからといってフワフワなのかと思いきや、ドッコイ普段はかなりリジットな感じがするのだ。それが即ちディフェンダーの走破性能に繋がっている訳だがいやはや全く凄いの一言だ。

ギヤボックスも全く二クラス上と思われる大きなものである。グッと低速から、ギュ〜ンと高速クルーズ迄、この中のギヤ達は多少勇ましい響きを聞かせるもののそれこそが安心感に結びつくというものだ。

然し乍ら、全ての上部構造は、非常にソフトにフレームにマウントされているのである。フレームを完全に浮かせるアシ、猛烈な剛性を誇るフレーム、そしてそのフレームに無理なく載せられたボディ・パーツ。

ディフェンダーの底力の影には一切妥協ない設計があった。何でもない、なんにもないのに結構な値段。そのソコには、乗るものを世界中何処にでも運ぶ気合いが見えるのだ。

確かに、「一般道」にはこのソコ力を発揮する場所はないかもしれない。しかし、これなら30年経っても、元のまま「一般道」を走り続けよう。「ソコ力」が違うと云われるディフェンダー。違いはソコにあるのであった。

さらに詳しく見てみよう。
写真はリヤアクスル上部に位置するアッパーアームを写している。デファレンシャルケースサイドのブラケット頂部に向かってセンターフレームから伸びたV字状のリンケージが、大きなアクスルの運動を生み出す原点である。下の両サイドを押さえる長いトレーリングアームとの連携で、非常識な程大きなギャップも捕らえて離さないレッグモーションが生まれるのである。これは、ある程度以上舗装路性能を捨てて、オフロード性能を選択した顕著な部分である。このため、特に改造を施さなくても充分以上の走破性を得られ、デフェンダーはただ、使う事だけを考えれば良い車に育っている。

ここに、ショックアブソーバーをみる。
フレーム上部に向かって、アクスル下部から大きく斜めに配置されたショックアブソーバーは非常に長い。長さだけではなくロアサポートは車輪に大きく近付けられ、障害物へのヒットを極限迄避け、対角線配置によって大きなアクションをマイルドに吸収する性能を与えられている。また、良く見るとコイルスプリングの上部の巻きが細かいのが分かる。この部分は、普段は縮んでいるが、こちら側の足が落ちるとこの部分が伸び始め、ロードホールディング圧力を最後迄減少させない性能を得ている。

これによって無理なく、普通あり得ないギャップ迄も柔軟に捕らえる脚力を求められるのである。これらがトータルに作用して、デフェンダーの底力を造り出しているのである。

見ての通り完全なリジットアクスルを採用しているデフェンダーは、姿ばかりでなく下の方を見ると尚更、高速における操縦安定性は満足に得られそうもない。然し乍らオンロードとオフロードの両方の性能を最高に結晶する事は、様々な面から見ても困難である。中途半端にあわせようとする事で、結局どちらにも満足出来ないものが出来る位なら、いっそのこと、どちらかを思いきり捨てて設計に挑むことは、車の場合特に、名車を作り上げる為に欠かせない選択なのである。

写真左は右前足だ。至ってシンプルな構造が分かる。車の挙動は全てスプリングとリーディングアームによって車軸に伝えられる。逆に、車軸から伝わる地面の凹凸はこの二つのみで総べて吸収される。

右写真はステアリングアームをクローズアップしている。長いステアリングタイロッドの為、ステアリングシステムへ直接的な路面の挙動が伝わり難いシステムの為、どうしてもトラックに似たダルな挙動をするが、これが重量級のオフロード運転の耐久性にはに欠かせない。

左前輪をみる。こちらのバネの見え方で、ただのコイルバネではない事が分かって頂けよう。下の半分が縮み側に、上の半分が伸び側に作用する。これで伸びても縮んでもその伸縮力に偏りが出ないのである。

右にはステアリングタイロッドがスイベルケースに繋がる所を見る。左右両輪を結ぶパナールロッドをアクスル後方におくことで、タイロッドとパナールロッドを同時に損傷しないようになっている。オフロードでのトラブルを最小限にしようとする配慮である。

さらに、ここに見るようにリーディングアームのシステムは、同時にブレーキング時のノーズダイブを制限する効果も有り、これが今流の高性能四駆によく採用される理由でも有るが、スプリングの設計やリーディングアームのフレーム側サポートブッシュの構造によりDefender独自の卓抜した走破性を創り出している。

リアアクスル、横方向車軸受け同士を結んでいるスタビライザーバーは、 CSW仕様に装備されるもの。乗用車としての走行安定性をより高める装備であり乍ら、形状を工夫し貴重なアシの動きを阻害しないように配慮されたもので、車輪の外径から逸脱しない近距離で充分な捻れと剛性を得られるよう作られている。同じ構造のスタビライザーバーはDescoveryやRangeにもみられ、大量の乗員を載せて高速移動することが主な用途と考えられるCSWにはそれに相応しい性能を与えていると言う訳だ。

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